日本時間2020年2月10日に開催された第92回アカデミー賞。
ポン・ジュノ監督による映画『パラサイト 半地下の家族』が
作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞の最多4部門を受賞して注目を集めています。
日本でもじわじわと動員数を増やしている同作。
喜劇に悲劇、ミステリーと1つのカテゴリに収まりきらないエンタメ性もさることながら、伏線や暗喩がたくさん張り巡らされているところも見どころのひとつなんです。
【注:ここからはネタバレありです】
そこで今回は、『パラサイト 半地下の家族』を鑑賞するときの注目ポイント7つをご紹介したいと思います。
ネタバレを含んでおりますので、あらかじめご了承いただければと~!
1. 格差を「視覚的な高低差」で表現
同作の主人公は、坂の下の貧困街で暮らすキム一家。キム家の長男・ジウが、坂の上にある裕福なパク一家の家庭教師を頼まれたことで物語が動き始めます。
貧しいキム家が住んでいるのは低所得の人が利用するとされる半地下。そして裕福なパク家にも深い地下室があって、そこにも人間が暮らしているんです。
「坂の上・下」「地上・半地下・地下」といった視覚的表現で格差を見せることで、より強い印象を残しているように感じられます。
2. 裕福なパク一家が「最上級」ではない
パク一家の母・ヨンギョは、会話の中にちょいちょい英語を盛り込むのがクセ。また子どものおもちゃに対して「アメリカ製だから大丈夫よ」と口にするなど、アメリカへの憧れを強く抱いているように見えます。
つまりは、裕福で社会の最上級に位置しているように見えるパク一家にもまた、憧れの対象があるということ。上を見ても下を見てもキリがないと実感させられる場面です。
3. 「能力が高いのに職につけない」という韓国の現実
キム一家は貧しいながらも実は全員能力が高く(書類の偽造もできちゃう!)ソツなくなんでもやりこなした結果、パク家に “パラサイト(寄生)” することに成功しました。
しかし元々は全員無職。劇中にも「運転手募集に大卒5000人が殺到する」といったセリフが出てきますが、韓国の実情がうかがえて暗澹たる思いに……。
4. 子どものインディアンごっこは「侵略」の暗喩?
パク家の子どもはインディアンごっこが好き。家の中でおもちゃの矢を飛ばして遊ぶ場面がたびたび出てきますが、そもそもインディアンはアメリカの先住民で「侵略された側」です。
パク家もキム家に「侵略されている」ため、暗喩に思えてなりません。
5. 格差を強烈に感じる雨のシーン
大雨が降ったある日、半地下にあるキム家が浸水。避難を余儀なくされますが、パク家の子どもは雨の中にわざわざテントを引っ張り出してきて、庭で寝ようとするんです。
片方は全く余裕がなく、もう片方は遊ぶ余裕がある。同じ雨でもここまで違うところに、改めて格差を感じます。
6. 自分とかけ離れた存在よりも「1つ上」を憎む
クライマックスのパーティーシーンで、パク家の地下にひっそりと暮らしていたグンセは、“半地下出身”のキム一家を襲撃します。しかしグンセは、裕福なドンイクに対しては崇拝するようなシーンを見せていました。また、キム家の父・ギテクは、グンセではなくパク家の父・ドンイクを刺殺してしまいます。
このことから「人はかけ離れすぎた存在に対しては憧れを抱くものの、身近な “1つ上の身分” を敵とみなして憎む」のだということがよくわかります。
7.「1つ下」の出現で生まれる差別されることへの憎悪
グンセの出現なしには、ギテクの強行はありえなかったはず。
ドンイクがギテクの「におい」を嫌っていたことが最大の引き金ですが、グンセという「自分よりも下」の人間がいなければ、ずっと我慢し続けていたような気がしてなりません。
「見下せる相手」によって生まれる、「自分は違う、差別されたくない」という思い。格差という根深い問題を考えさせられる場面です。
【話題作を映画館で観よう!】
かなりネタバレしてしまいましたね(笑)
アカデミー賞で快挙を成し遂げた『パラサイト 半地下の家族』は、間違いなく今年いちばんの話題作。
社会問題を訴えつつも
誰もが楽しめるエンターテインメント作品に仕上がっているので
ぜひ劇場に足を運んでみてください♪
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